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「シン様が紅茶を淹れて下さったんですか?」
部屋に戻り備えつけのソファーに並んで座って話すと、メイさんは目を丸くして驚いたような表情を浮かべる。そしてその後に両手で自分の顔を覆い、「キャー!」と高い声をあげた。
「メ、メイさん……?」
興奮した様子に思わず名前を呼べば、目を更に見開いて今度は私の肩をつかんで揺らし出す。
わ、小柄なのに力強い……!
「カルドーレ様! これは大いに脈ありです!」
「脈?」
「シン様はご自分が気に入った方でないと自ら飲み物をお淹れになりません」
「シン様が淹れると言って下さったのでお言葉に甘えたのですが……」
最初は驚いて私が淹れますかと聞いたら、「僕が淹れたいだけだから気にしないで」とやんわり断られてしまった。
正直、王子様にお出しできるほどおいしい紅茶を淹れられる訳ではないので助かったのが本音だけど……。
「王子であるシン様自らが紅茶を淹れて下さったのは、きっとカルドーレ様にシン様自身を見ていただきたいからだと思います!」
ズバリといったように人差し指を立てて見せるメイさん。赤い頬がまだ続いている興奮状態を表しているようだ。
「このわたし、メイがシン様と結ばれますようお力添えをさせていただきます」
胸を張って胸元に手をあてるメイさん。キラキラした目に赤い頬、心なしか呼吸が速い気がするけど……。
ここはもうメイさんに早く伝えて分かってもらおう。
「――あの、すみませんが親の推薦なもので、できるだけ早く辞退させていただきたいんですけど……」
「な……っ!」
雷に打たれたような表情をしてから顔をうつむかせるメイさん。だんだんとメイさんの体が小刻みに震え出したので不安になった私が様子を見ようとした瞬間。
「ひ……っ!」
鬼気迫るような顔を勢いよくあげて私に飛びついた。ぎゅうぎゅうと腕の中に閉じこめられて息がしづらいほど圧迫される。
「ダメです! それはいけません!」
耳がキーンとするような大声に頭がクラクラする。何とか体を動かして腕の中から脱出すると目に涙をためたメイさんが私をじっと見ていた。
「わたしはカルドーレ様のおつきの任を受けました。カルドーレ様が早々に辞退して帰られてはわたしの首がとんでしまいますー!」

