「僕の気持ちにカルが流されているんじゃないかって、女々しく思ってしまうんだ……」
確かに少し前まではシン様におされていたかもしれない。
けれど、今はシン様のことが好きだと、シン様と婚約者でいられて嬉しいと心から言えるから。
私は右手で空いているシン様の左手を握り、私の右側の目元にあてた。
「カル……?」
「私は泣き虫です。緊張したり、恥ずかしかったり。嬉しかったり、悲しかったり。色々な時に泣いてしまいます。今まで自分のこの体質に少なくとも悩んでいました。でも今はシン様と出会えたのがこの私でよかったと思えるんです」
「どうしてそう思うの……?」
「シン様が私の涙にこめられた思いを読みとってくださるからです。お父さんやお母さんには涙の理由を悟られてつい意地を張ってしまうこともあります。けれど、大好きなシン様には私の色々な気持ちを隠さずに知っていただきたいと思うから――」
「カル……っ」
握られた左手を引かれ、一瞬でシン様との距離がなくなる。
広い胸と力強い腕に包まれてドキドキするけれど、これから先の未来でシン様の腕の中が安心できる場所になったらいいなと思った。
「ありがとう。僕の気持ちを受け入れてくれて……」
「私こそ好きになっていただいてありがとうございます」
腕をゆるめられて顔をあげるとシン様の顔がとても近くにあって。
目が合えばどちらからともなく笑顔がこぼれた。
「仕事が落ち着いたら二人で遠出をしてみないかい?」
「お出かけですか? ぜひ行ってみたいです」
「場所はそうだね……。海をこえてジーア国、なんてどうかな?」
目を見開く私に、「どう?」と笑うシン様の表情が悪戯に笑うルーチェ様と重なって少し幼く見える。
シン様と旅行。そう思うと胸が弾んで嬉しくなって。
しかも気になっていたジーア国に行けるならもっと嬉しい。
「今から楽しみです!」
私はおさえることのない気持ちを顔に浮かべてシン様に抱きついた。
――これから先、どんな未来が待っているかは分からないけれど、泣き虫な私の涙を拭ってくれる優しくて強い王子様が側にいてくれるから。
つなぐ手の先の人がずっと私でいられますように。
そう願いながら目尻に涙を浮かべ、私はシン様の胸に顔をうめた――。

