体が揺れる感覚に何だろうとまぶたを開いていく。
 すると目の前に見えた様子に急速に意識がハッキリしていく。
 体が横になって高い位置にあり、シン様の顔がいつもより近い位置にある。

「目が覚めた?」

「シン様、ここは……!」

 ルニコ様と首飾りの力を信じていないわけではないけれど、元の時代に戻れたのか確かな証拠がほしい。

「無事に帰ってこられたよ。――ほら、彼女の元気な声が聞こえる」

 シン様に横抱きにされたまま耳をすませると、しばらく聞いていなかった明るい声が近づいてくる。
 バタバタと足音も聞こえるようになり、廊下の角からメイさんの姿が見えた。

「カルドーレ様ー! 過去に行かれていたというのは本当ですか!」

 目の前まで小走りできたメイさんが、息を乱しながら興奮したように聞いてきたので私はコクリと頷く。
 するとメイさんは目を見開いて頬を赤く染めてうっとりとした表情を作った。

「シン様がカルドーレ様を思ってご尽力されたそうで……。夢のようなお話でうらやましいです……!」

 「キャー」と暴走気味のメイさんにシン様が困ったように笑う。

「盛り上がっているところ悪いけれど、父から何か言づてを預かっていたりしないかな?」

 シン様がそう言うとメイさんは雷に打たれたような表情をして勢いよく頭を下げた。
 その勢いに驚いて、私は体をビクつかせてしまう。

「申し訳ありません! ルニコ様は謁見の間でお待ちしています」

「連絡をありがとう。頭を上げてくれると嬉しいかな」

 「は、はいっ」と勢いよく下げた頭を戻すメイさんの様子が彼女らしくて、戻ってきたんだなとジワジワ感じて涙が浮かんでしまう。

「カル……? どこか具合でも悪くなった?」

「――いえ。メイさんに会ったら戻ってきたんだなと思って嬉しくなりました」

「カルドーレ様……。――お二方、お帰りなさいませ! 揃ってお帰りになられて何よりでございます」

「メイさん……」

「ありがとう、メイ」

 ニッコリ笑顔のメイさんに、私とシン様は笑顔でただいまの言葉を返したのだった。


***


 それからメイさんと一度別れ、謁見の間の扉の前でシン様に下ろしてもらう。
 シン様が扉を叩いた後、私達は謁見の間の中へ歩みを進めた。
 広い謁見の間の室内、その奥にある椅子に座る人を見つけ、少し前に会った記憶と重なって不思議な気持ちになる。