「話は変わるが、シンから新しい力について聞けたことは思わぬ収穫であったぞ」

「みんながそうとは限りませんよ。僕も願かけのつもりでしたから」

「感情を読める涙が糧になるとはな。蛇神の血を受け継ぎ、水を操る私達への愛とも言える。そうだろう? カルドーレよ」

「へ……? あ、愛ってどういうことですか?」

 急に話をふられて困った私はシン様を見上げる。
 けれどシン様は柔らかく笑うだけで何も言わない。

「シン様……?」

「カルが気づいていないのならそのままでもいいよ。僕は飾らない君も好きだからね」

「シン様……」

 間近で見る綺麗な笑顔に私の頬は熱を持つ。
 きっとシン様の目には真っ赤な顔をした私が移っているに違いない。
 ゴホンと聞こえた咳払いに音がしたほうを見るとルニコ様がじーっとこちらを見ていてもっと顔が熱くなった。

「仲を深めるのは帰ってからにしてくれ。目の前でやられては目に毒だ」

「そうすることにします。僕以外の人にカルの可愛い様子は見せたくないですから」

「シっ、シン様……!」

 ギュッと抱きしめてくるシン様に顔どころか体が熱くなって、離してほしいと身をよじるとさらに力を強くされた。

「もう少しだけこうさせて?」

 聞こえるシン様の声が少しだけ震えているようで私は広い背中に精一杯手をまわす。
 「やれやれ」と小声で言うルニコ様の言葉を耳に入れながら、少しの間二人抱き合った。


***


 それから少し時間をおいて、私とシン様はルニコ様と共に宝物部屋へと足を入れた。
 やっぱり部屋の様子は私達がいた部屋とは違い、改めてここがいるべき場所ではないと感じる。
 ルニコ様は部屋の中心まで歩いて行くと首にかけられた首飾りを外して私達に見せる。
 首飾りは未来のものと変わらない輝きを放っていて、代々大切にされているんだなと思った。

「この部屋にたどり着いたのなら帰りもこの部屋がいいだろう」

 「手をつなごう」と言うシン様に私の左手とシン様の右手をしっかりとつなぐ。
 ルニコ様は向かい合うように立ち、首飾りを持った状態で私達に近づけた。