私一人じゃなくてよかった……と力が抜けてしまい、ポロポロと涙がこぼれてくる。
 クレアさんとメイさんが目を見開いて距離を縮めてきたので慌てて涙を拭った。

「どうしました? どこか具合でも……?」

「大変です! トリステ様、診て差し上げて下さい!」

 様子をうかがう二人にすごく申し訳なさを感じた私は助けを求めてお父さんを見上げる。
 眉を下げ、細められた緑色が一、二度隠れた後に頷いた。

「大丈夫だよ。娘は涙もろい質でね。到着が遅れることを気にしていたから、面談が明日へ変更になって安心したんだ」

 「そうだろう?」とお父さんが聞いてきたので勢いよく頷いて肯定する。
 長時間乗っても車酔いはしなかったから疲れがあっても悪い所はない。

「それなら安心しました。お部屋にご案内しますので今夜はゆっくりお休み下さい」

 和らげられた瞳で私を映すクレアさんが、お店によくくるお姉さんのような人と重なる。

「夜なのでお部屋には軽食をご用意しました。お風呂は部屋に備えつけのものがあります。他に必要なものがありましたらお申しつけ下さい!」

 メイさんは学生時代のクラスメイトみたいで。
 「ありがとうございます」と二人に返しながら、この二人と仲良くなれたらいいなと早く家に帰りたいのに矛盾したことを思った。

 ――この後、王宮内に入る前にリタに声をかけて近づいたら、別れを惜しんでくれているのかまた顔を舐められて。
 それには他の三人と一緒に思わず笑ってしまったのだった。