亡くなってしまったのだろうか。そう思うと体が震えたけれど、シン様が「気を失っているだけだよ」と小さな声で教えてくれる。

「けれど、彼の命はもう長くは保たないと思う。そんな気がするんだ……」

 シン様の言葉に「そうですか……」と返して術者をそっと見る。
 もしかしたらずっと命が終わる日を待っていたのかな……?
 私だったら家族とかが亡くなってずっと生き続けるのは寂しいし悲しいと思うから。
 目を閉じている術者の頬には涙が流れていた。

「――さて、ジーア国王様。これで観念していただけますね?」

「う……ぁ……っ」

 シン様が話しかけるとジーア国王様は床に座りこんでいて、口をパクパクと動かすけれど言葉にならないようで。
 どうやらシン様と術者の力を見て腰を抜かしたらしい。
 ――その後、そのままおとなしくジーア国王様は捕まり、企てに関係した者、アガタ様を含め全員が船でセルペンテ国へと送られた。
 それから数日は大変だった。
 シン様に怪我の心配をされ、無茶をしてはダメだと注意をされ。
 ついでにアガタ様に閉じこめられた時に鎖を無理に壊したことも話したら注意されてしまった。
 けれど、シン様が跡が残らないように全部綺麗に治してくれて嬉しかった。
 しっかり治るまで部屋に閉じこめられたのには驚いたけれど。


***


「この度はよくやってくれた」

 私の怪我がすっかりよくなった翌日、謁見の間に通された私とシン様は上機嫌なルニコ様に迎えられた。
 笑顔のルニコ様に対しシン様は珍しく無表情で、隣にいる私はハラハラする。

「笑い事ではありません。一歩間違えればカルはジーア国王様のものになるところでした」

「まさかジーア国にさらわれるとは私も予想外であった。この度はカルドーレに何も知らせずに作戦を進めて悪かったな」

「いえ……。解決されたのでよかったです」

 シン様から聞いた話ではアガタ様を婚約者として招いたのも作戦のうちで、端から正式なものではなかったらしい。
 けれど、危害が及ばないようにと今回の作戦は私には知らせなかったとのことで、私は安心したような寂しいような複雑な気持ちになった。
 それでも、解決されて本当によかったと思う。