アガタ様はルニコ様の部下の人に連れられてジーア国王様の前までヨロヨロと歩いて立ち止まる。
「もう止めましょう! 蛇神様のご加護があるセルペンテ国にはかないませんわ……!」
うつむいていくつもの涙を床へと落としていくアガタ様にジーア国王様は渋い顔をする。
しかし次いで口端をつり上げた。
「術者よ、この場にいる私以外の者を皆殺しにしろ!」
ジーア国王様の言葉に戦慄が走る。
気を失った部下の人も国民の人も娘であるアガタ様もみんな切り捨てるというの……?
カッと体が熱くなって視界が歪む。
「化け物王子も殺してしまえ」と吐き捨てるジーア国王様に私は我慢できなくなった。
「シン様は化け物なんかじゃない! 部下を、国民を、自分の娘を! 平気で切り捨てる貴方のほうがよっぽど化け物よ――!」
「うるさい! 早く皆殺しにしろ!」
「御意」
ニヤリと笑う術者が手のひらに石を乗せて見せる。
その石はこの時代でルニコ様と最初に会った時に持っていたものとよく似ていた。
その石が出た途端、シン様は床に膝をついてしまい私も合わせてしゃがみこむ。
「く……っ」
「フハハハ! 苦しいだろう? 異能封じの石は力が強い者にほど効果がある」
「シン様……!」
顔を歪め、体を震わせて苦しむシン様の目の前で私は泣きじゃくることしかできなかった――。