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 労働二日目の朝は寒さで目が覚めた。
 かけるものがないのにそのまま横になってしまったことを後悔してももう遅い。
 体のあちこちが痛むけど風邪はひいていないようで安心した。
 シロがいなくなっていたことを寂しく思いながらも仕方ないかと食器を持って小屋を出る。
 すると、外にはもう何人もの人がいてどうしたんだろうと思う。
 内心で首を傾げながら近づいて行くと、軍服を着た男の人が私を見てニヤリと笑んだ。

「確かに上玉だな」

 ジロジロと見てくる男性に不快感を持ちながら、言っている意味が分からずまわりの人を見るけれどみんな顔を青ざめさせて言葉を失っているような様子だった。
 見張り役の人だけが、軍服の男性にペコペコと頭を下げて引きつっているような笑顔をはりつけている。

「数日前にきたばかりで少々傷が残っておりますが、治せば問題はないかと」

「近頃王宮にいる娘達だけでは物足りないご様子だったが、これなら国王様に満足していただけるだろう。――こい!」

「な……っ」

 急に腕をつかんで引っ張られ、持っていた食器が地面にぶつかって音をたてる。
 訳が分からず、離すように頼んで腕を動かしても力を強くされる一方で痛みに意識がいってしまい、引きずられるようにして馬車に押しこまれた。

「何するんですか……!」

 暴れて馬車から出ようと扉に手をかける。すると首筋にピタリと冷たくて固いものがあてがわれた。

「おとなしくしろ。これ以上騒ぐとこの場で首をはねるぞ」

「……っ!」

 ピリッとした痛みを感じたかと思うと続いて熱を感じて動けなくなる。
 やがて馬車が動き出し、窓から見える膝をつく人達の姿が目に焼きついた――。