「そう…。私もう行かなきゃ。色々とありがとう…」


ラクエリは起き上がったが、アールがそれを制した。


「ダメだよ。まだ体力も回復してないし、宴の最中だからみんな悲しむよ?」


「………?」


アールがテントの入り口を開けると、サソリの身を焼いたり、甲羅を加工したりと騒いでいた。


「おう!起きたかお嬢ちゃん!な~んも無いとこだが、まぁ楽しんでってくれな!」

「あら、私の若いころにそっくりねぇ~、困ったことがあったらなんでも言ってね!」


「…………。」


暖かくラクエリを迎える村人を見て、ラクエリは茫然としていた。


「な、ここには君を捕らえようするやつはいない。だからゆっくり休んでな。」


アールがポンと肩を叩くと、ラクエリから大粒の涙が溢れ出した。


「なっ!?ど、どうした?」


「ううん…ごめん。まだ、まだこんなにもあったかい村があったなんて…」


「なぁ…ラクエリさえよければ、ずっとここにいてもいいんだぞ?」


「ううん…ごめんなさい。私、やっぱり行かないと…。嬉しいけど、これ以上いるとホントに…」


ラクエリの決意は固く、揺るがなかった。


「そっか…。じゃあ近くの都まで送るよ。また倒れられちゃ、たまんねぇし…」

「うん。ごめんね…」


その一言はアールではなく、村人に向けられたものだったとは、アールはまだ知らない。