この世界での水、体内に摂取できる水分の類は、そのほとんどが黄金に近い価値を持つ。

水を求めて命を落とした者は数多くいる。


見知らぬ他人に水を与える。
それは手に収まらない金をドブに投げ捨てるのに等しい行為だった。


「あ…りがと…う。」


生気が戻った少女は安堵感と疲れで気絶し、マントから右腕がこぼれた。


「なっ!?この子…」


二の腕に刻まれた交差する十字架。


それが何を意味するか、気づいたアールより早くソラが発した。


「…アクア・ラミエル…」


いつも笑顔のソラの表情が、重く、冷たいものとなっていた。


「と、とにかく。今はこの子を村に運ばないと…」

















「なぜ天使がこんなところに…」


少女をおぶっていたアールは、自分のわき腹を押さえた。