天使の名を持つ少女

ほどなくして、ラクエリが村に着いた。


「死体が、無い…?」


血の跡やレールガンの弾痕はたくさんあるのだが、村人や漠賊の体は見つからなかった。


「…………はっ。」



村の逆端まで行くと、アールが立っていた。アールの前には盛り上がった砂山がいくつもあり、墓標の代わりにテントの切れ端が置かれていた。


その数55、明らかに村人の数より多かった。


「………、ラクエリか…。悪いがもう、お前の仲間は全員殺した…。」


「ソラ…ちゃんは…?」


「…………、あいつも俺が…殺した…。あいつは…」


「……………」



「俺は…ソラのこと…何も分かってなかった…。あいつにとって…アクア・ラミエルがどうとか…関係無かったんだ…あいつにとって一番大切だったのは…俺だったんだ…」


乾いたはずの風が再び湿っていった。


「バカだよな…俺。天使が大事だからって…自害しようとして…ソラの一番大事な気持ち…分かってやれなかった…」
















「ねぇ、これからどうするの?」


風が乾きを戻し、アールは残ったもので身支度を始めた。

眼にはもう迷いはなく、まっすぐとしていた。


「世界中の天使を探し、必要なら助ける。それが俺にできる、カイへの、村人への、…ソラへの弔いだ…。…一緒に来るか?」


「いいの!?」


「お前も天使だ。救える命は、全て救いたい…」


「…ありがとう…」