《光side》
まさか、ワンコールで電話に出るとは思わなかった。
「も、もしもし。親父?」
「おー光、電話なんて珍しいな。どうした?」
どうした?って…
「どうしたもこうしたも、今どこにいんの?何か兄貴が親父達が世界旅行に行くとか言ってんだけど」
俺は兄貴が言っていた話をそのまま親父に話した。
親父は俺の言葉を黙って聞いていた。
そして
「うん、俺、今から未菜と旅行行ってくる」
そう明るい声で俺に言った。
ま…まじかよ!!!!
「俺達、結婚したときに決めたんだよねー。結婚二十年目には世界旅行行こうって。ほら、十年目には日本全国の旅したろ?光は小さかったし覚えてねーかな」
「………………」
てことは兄貴の話、本当だったのか…。
いや、だったら一番上の兄貴だけじゃなくて俺達にも言っていけよ…。
「あ、もう飛行機来るから切るわ。お金なら銀行にあるから引き出して使えよー。色々聞きたいことはあるかもしれないが、時間ないからまたな」
「え!ちょっ…」
プープープープー
………切られた。
俺達これから五人でやってくの?
親父達が帰ってくるまで?
………無理じゃね。