はっと気づいて時計を見ると、短針は40分を指していた。

私はいつも、朝に由香と瑞穂と話すために、7時43分の電車に乗る。

急いで準備をして家を出たけど、やはり間に合わなかった。

私は一本遅れの、57分発の電車に乗ることにした。

電車内は意外に混んでいた。

ドアから入ってすぐの席が空いた。

私はちょっと嬉しくなって座ろうとした。

と同時に、もう一人この席に座ろうとしている人がいたことに気づいた。

「どうぞ。」

その人は、笑顔でそう言ってどこかへ行ってしまった。

目が合ったその瞬間、見とれてしまった。

小さくて丸い顔。髪は少し茶色がかっている。

ぱっちりとした目には、カラコンを付けているかのように見える透き通った茶色。

その上にはくっきりとした二重まぶた。

笑った時には、ほおにえくぼを見せる。

優しそうな人だった。