「なのに…無駄に意地張っちゃって、かわいくない態度とってた…。」


まさか…まさか…小谷さんが俺を好きだったなんて…。


俺がもっと早く自分の気持ちに気づいていれば…


小谷さんを苦しめることも…


『好きだった』と過去形になることも…


なかったのに…。


小谷さんの愛情の裏返しとも言える態度にも気づかなくて…。


自業自得だった…。


「小谷さん…俺…」


「何も言わないで?あと…今日言ったことは忘れて…!」


そう…だよな…。


俺が今更自分の気持ちを伝えて何になるって言うんだ…。


「じゃあ…あたし先行くね。」


「…小谷さん!」


俺はここから出ていこうとドアに手をかけた小谷さんを呼び止めた。


「…ん?」


「幸せになれよ!」


俺は心からそう言った。


「うん…!ありがと!」


ガラッ━


小谷さんはまた…歩き出した。




俺の目にはもう…涙は浮かべていない。


『幸せになれよ!』


そう言ったことも後悔しないだろう。


俺はずっと…小谷さんと…


そして雪哉の幸せを願ってる。


絶対幸せになれよ…!


そう願い続けた高2の秋…。