もう人気者には恋をしない

*


「失礼しまーす……」


 展示会場になっている教室をそっと覗いてみた。ちょうど誰もいなかった。

 美術部の絵は、イーゼルを使って並べて置いてあるのと、教室の壁に掛けてるのがある。

 私の絵はイーゼルの列にある。

 誰もいないと知った後藤先輩は、教室に入るなり堂々とクマさんの頭を取った。さらに、上半身だけ着ぐるみを脱いだ。


「はぁー、暑かったぁー」


 最初見たときよりも、すごい汗が出てる。Tシャツもかなり濡れてる。


「先輩、大丈夫ですか?」

「うん、こうして通気を良くしておけば何とか……

 しまったなぁ。タオル持ってくれば良かったよ」


 ……あ、そうだ。
 ハンカチハンカチ……あった。

 これじゃあ全然拭いきれないけど、ないよりマシかも。