もう人気者には恋をしない

 次から次へと来る仕掛けに怯えながらも、クマさん(後藤先輩)の背中にしがみついて歩いていた。


「先輩……じゃなかった。

 クマさんはこういうの平気なんですね……ひっ、冷たっ!」


 ブシューと、冷気を掛けられた。


「うん、クマさんは全然平気だよー。それより森の中の方が怖いよ。狼とか猪とか……あと、熊とかも出るし……おっと」

「きゃあ!」


 手が、壁の下からいっぱい出でてきた!後藤先輩は動揺することなく、その内の一個を軽く踏んづけた。


「く、熊って……クマさんも熊ですけど~……」


 恐怖で声が震える~。


「……あ、そうだった。人間の世界にずっといたから、自分も人間だと思い込んじゃった。テヘッ♪」


 と、クマさん(後藤先輩)は頭を小突いた。


「……ぷっ!先輩ってば、そこまでキャラの設定をしてるなんて、ヤル気満々ですね」

「だからぁ、僕は先輩じゃなくてクマさんだってばぁ」

「ていうか……その声、疲れません?」

「……うん、かなり」


 普通の声で本音が漏れた。


「須藤さん、ほら。だいぶ進んだよ」

「え?あ……いつの間に……」


 ボロい看板に『ゴールまであと半分。まだまだ恐怖を味わうがよい』と書いてある。

 話ながら進んだから、早く感じた。


「あと半分……いけそう?」

「はい、大丈夫です」

「よーし!目指せ、ゴールだぁ!」


 再びクマさんになりきって意気込んだ。

 お化け屋敷嫌いの私がここまで来れたのは、クマさん効果だけじゃない。

 後藤先輩が、そうやって楽しませてくれるから……

 それでも先輩は、みんなと同じように接してるだけなんだろうけど……

 そう思うと、胸が痛んだ。