もう人気者には恋をしない

「じゃあ先輩、さようなら~」

「おう。気をつけて帰れよー」


 いいだけ笑ったファン達は満足げに、私の横を通り過ぎた。

 ……えっ……

 今……すれ違いざまに、私の方をジロッと見ていったような……

 というより……睨まれた?

 ファン達は何事もなかったように、後藤先輩に手を振りながら帰っていった。

 何、今の。

 正直ちょっと……怖かった。


「ごめんね、話の途中で……

 須藤さん?どうかした?」


 後藤先輩が、いつの間にか私の方を向いていた。

 睨まれたのは……私が後藤先輩と、二人で話してたからじゃ……


「あっ……えっと…………」

「なんか……あった?」


 先輩が心配そうに見ている。


「……いえ、何でもないです……」

「……ホント?」


 どうしよう。

 一瞬言おうか迷ったけど……

 結局私は、精一杯笑みを浮かべて、

「はい。何でもないです」と言った。

 それでか、先輩はようやく「なら、いいんだけど」と、身を引いた。

 ハッキリとしたことじゃないし。言ったら言ったで、先輩が気にしちゃうし。こんなこと、むやみに告げ口するものじゃないよね。

 今は、気のせい……だと思っておこう。