もう人気者には恋をしない

「昔々、あるところに、女の子がお母さんと二人で住んでいました。
 女の子は、今日も家の近くの原っぱで、お花を摘んでいました」


 定番の出だしだった。


「ところが、風のイタズラで、女の子の帽子が飛ばされてしまいました。
『帽子さ~ん、待って~!』
 けれども、追いかけても、追いかけても、帽子はなかなか待ってくれませんでした」


 ……読むのうまいな。

 セリフのところも感情をちゃんと入れて読んでるし。

 声も心地よかった。中学生とは思えない、落ち着いたトーンだった。

 俺はいつの間にか、あの小さな女の子みたいに、本格的に聞き入っていった。