運び屋の受難



もう少し足場が安定していれば。

もう少し距離が開いていれば。

そうしたら何とかなったかもしれない。


だけどそんなかもしれない話は全くの無意味。




私の背後に現れた男は飛びかかってきた。
こんな狭い階段で避けきることはできない。

男の体ごと階段から落ちた。
そこまで高くなかったけれど、やはりコンクリートに打ちつけた体は痛む。

だけど人の感触がなくて少し安堵した。
私の下にガソリン臭い彼がいるのは不快だ。臭い移りはやっぱり気になる。