運び屋の受難



「臭っ!」

「はい、動かないように」

顔を濡らした男にライターを向ける。
こんなちっちゃいライターで何ができるつもりなんだ、と暴走族達の目が訴えていた。

彼らの表情は、驚きから舐め切った顔に戻った。ニヤニヤしている。

「無策で出てくるわけがないよね。もし私がヤケを起こしたと思ってるならあんた達は大馬鹿だ」

暴走族は面白くなさそうな顔を浮かべた。馬鹿にされていると察知したのかもしれない。

「ひとつ、この水鉄砲の中身。これが何かは臭いでわかるんじゃないかな」

この鼻につく臭いはガソリン。
こっちの服にも臭いが移るから嫌だった。

「さて、さらにひとつ。このライター。
まさか市販のと同じだと思ってる? そんなのでここに出てくるほどまぬけなら、私はとっくに死んでるよ」

標準を男から少し逸らし、火を点ける。
1メートルほどの火柱が出た。

「私が何を言いたいのかわかったかな。
まぁ敢えて口に出してあげよう。
……燃やされたくなかったら道を開けろ」

そう言って口角を上げた。
私だって人を燃やしたいわけじゃない。
頼むから引き下がって。そう願った。