運び屋の受難


「私、帰っていいよね?」

ベッドから立ち上がろうとすると、腕を引かれた。
バランスを崩して死神の方に倒れ込んでしまう。再び整った顔が真近に見えた。

「駄目だよ」

「なんで?」

「せっかく二人きりになれたんだからさ、もっと楽しもうよ。もったいないじゃん?」

「あんたいていい思い出ない」

「あははは」

あははは、じゃない。


初めて二人になった時、私は殺されかけた。

次は、ただでさえ傷だらけの体を咬まれ気絶した。

三度目は病院。身動きをとる度に痛みを感じた。

「……やっぱ帰る」

せっかく治ったのにまた怪我させられてはかなわない。

それを死神は許してくれず、体をぎゅっと抱き締められた。
力が強い。痛い。

こんなに細っこいくせに、どうしてこんなに力が出せるのかが不思議。