「龍也君の手、やっぱり大きいね」

「なんだよ。ちょっとかわいいこと言うじゃん」

「えっ? かわいくないよ!」

「はは、ひなって見てて飽きねーな」



その言葉に、また胸がちりちりと痛む。
こうやって話していると、何も知らなかった頃と変わらないのに。


「ちゃんと食ってるか? つーかもっといっぱい食べろよ。
この前倒れた時びびったし。
もしかしてダイエットか?」

「別にそういうのじゃないよ」

「やめとけやめとけ、さらにまな板になったら目も当てられねー」

「ひ、ひどすぎる……!」

軽く彼の背中をたたくと、さらにおもしろそうに笑った。



「はは、じゃあまた放課後!」

「うん、あとで」


笑顔で手を振って、彼と別れた。


龍也君の背中が遠ざかっていく。
小さくなる背中を見送りながら、また涙がこみあげそうになった。



――苦しい。

私、いつまで上手に笑顔が作っていられるだろう。



苦しい。
苦しくて苦しくて、もう全部吐き出してしまいたい。



龍也君の気持ちも、自分の気持ちも分からない。