「そんなことないっ!」
突然大きな声を出したからか、彼も驚いて動きを止める。
「私も、叶うかどうかまだ分からないけど……。
でも、頑張ればきっと変わると思う。
龍也君、運動神経もいいし、自分の言いたいこと、堂々といえるし。きっと何にだってなれるよ!」
するとさっきまでいじけたような表情だったのに、急におひさまみたいな笑顔になる。
「まじか! なんかひなにそう言われると、大丈夫そうな気ぃすんな!」
その顔に胸がぎゅうっと苦しくなる。
び、びっくりした。
突然笑うから。
私は心臓にそっと手を重ねる。
本当、笑うとかわいい顔なんだよなぁ。
「で、でも偉そうなこと言っても、私だってあんまりテストの結果よくなくて。
家から通える範囲にあるの、県内の教育大だけだから。
そこに落ちたらもう先生になれないから、しっかり勉強しないといけないんだけど」
「あぁ、地元の大学行くのか」
「うん。特に数学と、物理があやふやで」
へへ、と笑うと。
「教えてやろうか」
彼から真剣に似合わない言葉ナンバーワンが飛び出た。
「……え、えへ」
教える?
龍也君が?
…………?
笑ってごまかそうとすると、がぁっと牙をむかれた。
「てめぇ、今俺が頼りになんねーと思っただろ!」
「お、おも、思ってませ、ん、よ?」
「しゃべり方カクッカクじゃねーか!」
そしてずいっと手を突き出す。
「出せ!」
「えっ」
「問題集でもテストでもなんでもいいから、わかんないとこ聞いてみろや!」
怖っ!

