「はぁ……」


何度も溜め息がこぼれた。


自分の家について、銀色の小さな門を開く。
私、変な顔してないかな。
目が赤くなっていないか不安で、一度ぎゅうっとまぶたを閉じた。


胸の中にどろどろした物が溶け残ってるみたいで気持ち悪い。



どうして龍也君、あんなこと言ったんだろう。


今までちょっと乱暴な口調な時もあったけど、あんな風に人を完全に否定するようなことは言ったことなかったのに。


もやもやしながら自転車をとめていると、後ろからぐいっと腕をひかれ、大きく目を見開く。



「おい、待てよ」




――まさか。


だって、いるわけないし。


驚いて振り向くと、そこにはやっぱり龍也君がいた。


「龍也君! 私の家、どうしてここだって分かったんですか?」

「野生のカン」

「す、すごいね」


どうして分かったんだろう。もしかして、実は本当に狼とか。
私が本気で驚いているのに気まずくなったのか、彼はあっさりばらした。


「ていうのは嘘。走って着いてきたらなんとなくここらへんに来たんだよ」


あぁ、なんだ尾行しただけか。
龍也君は深く息をついた。


にしても早かったな。
私が自転車で逃げてからすぐ、一生懸命追いかけてくれたみたい。
さすがにちょっと息が切れている。


「それで、あの……」


問いかけると、大きな手がこちらに伸び、カシャンと門を揺らす。


もしかして怒られる!? と身構えていると。


龍也君は、素直に頭をさげた。


「さっき、悪かった」


彼らしくない言葉が飛び出し、思わず龍也君の顔を見つめる。


「……なんだよ」


ちょっと恥ずかしいのか、心なしか顔が赤い気がする。


「……いえ、私もついかっとなって。ごめんなさい」

「そんだけだから」