観念してペンを動かす手を止め、彼を見返すと小さな声で伝えられた。


「真面目」

「は、はぁ」



それしか取り柄がないからなぁ。

「それ何の本?」


「えっと、資格の勉強とか」

「なんでそんな勉強してんの?」

「将来なりたいものがあるので」


するとさっきまで興味がなさそうだった彼の瞳が、きらりと鋭く光る。


「……何?」

「……恥ずかしいので」


夢を言葉にするのって、すごく恥ずかしい。
バカにされてしまいそうだから言いたくない。
するとにょきりと正面から両手が伸びてきた。


そして顔をぐっと前に引き寄せられる。


「何? 何? 何っ!?」


いつの間にか、彼の顔がすぐ目の前にあった。


「りゅ、龍也く……」


顔がぼっと赤く染まる。


「もっと恥ずかしいことをしてやろうか?」


は!?

龍也君の髪の毛は、きらきら蜂蜜みたいな色できれいだ。


「龍也君、ここ図書室!」


私達の後ろに座っていた図書委員さんがわざとらしくごほん、と咳払いする。


「とにかくここを出ましょう!」


これ以上ここにいるのはどうしようもなく恥ずかしくて、本を持って図書室の外に飛び出した。