「で、結局どうなったのよ?」



いつもと変わらない、学校の教室。
龍也君が意識を取り戻した数日後の放課後。


えみはお菓子を食べながら私に問いかけた。


「う、ん。言ったような、言ってないような」

「何それ」


不満気な表情だ。


「なんか意識朦朧(モウロウ)としてたし、多分分かってないんじゃないかな。
そのあとお医者さん呼んでからは、なんか検査とかでわーってなっちゃったから」

「えーい、はっきりしないなぁ」

えみはまたぱりっ、とお菓子を噛み砕く。


「でも、大丈夫。
どんなに離れてても、本当に会いたいってお互いに思っていたらきっと会えるから。
あの時確かに気持ちが通じ合ったって、私は知ってるから。
だからもう大丈夫」


そう答えると、えみは恥ずかしそうに顔を赤くした。


「何それ。なんかいつものハルじゃないみたい」


「そうかな?」


彼女に笑顔でこたえ、たしかに変わったかもしれない、と思う。


何があってももう大丈夫。
今の私は心の底から、確かにそう思えるから。


鞄を持ち、元気よく立ち上がった。


「よし、今日も病院行ってくる! そろそろ退院出来るみたいだし」

「おう、行って来い!」

「また明日ね」



えみと別れ、私は病院への道を急いだ。

歩いている間、たくさんの人とすれ違う。

今日はいい天気だ。
空が高くて、雲ひとつない晴天。
スキップでもしたくなってしまう陽気だ。
もうすぐ春になる。
龍也君も私も好きな、あたたかい春が来る。


そう思いながら橋の上を歩いていると。


道の途中で、いきなり知らない男の人に後ろから手を引っ張られた。


「ひゃっ!?」


驚いて、変な悲鳴をあげてしまう。