病院につき、彼の部屋まで急ぐ。
彼の病室までたどりつくと、ちょうど三十代くらいのきれいな女の人が出てきた。


「あ……」


それが誰なのかは、すぐにピンときた。
龍也君のお母さんだ。
ちょっと怖そうな雰囲気もあるけど、今は疲れているみたい。


ずっと龍也君に付き添ってるから、当然だよね。


私は彼女に小さく頭をさげた。
彼女も私の方に視線を向ける。


「……あなた、龍也の知り合いよね?」


救急車を呼んだ時に見た記憶があったのか、私のことを覚えていたらしい。


「はい。龍也君、大丈夫ですか?」


そう問いかけると、さっきより少しだけやわらかい表情になる。


「えぇ、大丈夫。あとは目を覚ますのを待つだけだから。
お医者さんも、そんなに心配しなくていいって。
きっとすぐ元通りになるわ」


「よかった……」


安心して、ほっと息をつくと。
彼女は不思議そうに目を見開き、私をみおろす。


「もしかして、あなたがひなちゃん?」

「え!? 多分そうですけど。どうして?」

いきなり名前を呼ばれ、びくっとした。
彼女はまじまじと私を見ながら、少し微笑む。


「あの子、ずっと夢の中でひな、ひなって呼んでたから」

「……え?」


私のことを、呼んでた?