「龍也君! しっかりしてっ!」

「陽菜ちゃん、俺救急車呼ぶから」



透さんがそう言った声が聞こえた気がした。


「龍也君、しっかりして! 龍也君!」


彼は目を閉じたまま、何も言わない。


「お願いだから、返事をして!」


私は彼の手を握りしめて、ただただ祈ることしか出来なかった。




それから龍也君は救急車に乗って病院に運ばれて行った。
私と透さんも、単車に乗ってそれを追う。


途中で透さんが色々話しかけてくれた気がするけれど、まったく耳に入らなかった。


だけど病院についても、私達は中に入れてもらえなかった。
必死に食い下がったけれど、もう面会時間が過ぎているから関係のない人間をいれることは出来ないらしい。


不安な気持ちを抱えながら、結局何も出来ずに追い返されてしまったのが歯がゆかった。