「どう? ちょっとはときめいた?」
「透さんは、いつもそうやって適当なことを色んな女の子に言ってるのかなぁって」
「あはは、バレちゃったか」
楽しそうに笑う彼に溜め息をつく。
だけど……。
ふざけたような態度だけど、なんとなく私のことを励まそうとしてくれているのは分かった。
私は立ち上がり、彼に頭を下げる。
「ありがとうございます。
ちょっとだけ、自信ついたかも」
笑顔でお礼を言うと、透さんは驚いたように目を見開き。
私の髪をさらりと撫でた。
「あ、あの」
彼との距離が近くて、顔が熱くなる。
「やばいな、ほんとに好きになりそう」
「そういう冗談ばっかり言ってると、いつか刺されますよ」
「いや、冗談じゃないよ」
彼はさらに顔を近づけ、すぐ側で問いかけた。
「ねぇ、本気で俺と付き合わない?」
珍しく真剣な顔をされると、どうしていいか分からなくなる。
答えはもう決まっているけれど。
「……ごめんなさい」
私はもう一度頭を下げた。
「私、龍也君が好きだから」
「だよねー、知ってる」
ずいぶんあっさりした言い方だった。
「やっぱり冗談なんですね!」
その問いかけに、透さんはいつもみたいにふわりと笑って肩をすくめた。
「さぁ、どっちかな」

