そうだよね。
尊敬してる人の彼女を好きになって、付き合って。
だけど派閥にも居づらくなって、でも簡単にやめるわけにもいかなくて……。
龍也君もきっと、見えない所でたくさん悩んでるんだ。
難しい顔で考えこんでいると、透さんは私の前髪を花の飾りがついたピンでとめた。
「ほら、かわいい」
「えっ?」
近くにあった鏡に顔をうつすと、確かに前髪をとめただけでだいぶ印象が違った。
「あ……透さん、センスありますね」
私は指先で少しカサカサした飾りの感触を確かめる。
しかしこの人はどうしてこんな物を持ってるんだろう。
まさか自分で使うわけでもないだろうし。
本当に謎が多い人だ。
彼はにこにこしながら私のおでこをぴんとつついた。
「ちょっとは自信ついた?」
「……あんまり。
さっき誰かさんにボロクソに言われたので」
「はは、だからかわいいからいじめたくなっちゃっただけだって。
それに俺、有華さんより陽菜ちゃんの方がかわいいと思うよ」
私はじっとりと彼を睨みつける。
「目が悪いんですね?」
「攻撃的だねー」
だって、さすがに私のほうが星乃先輩よりかわいいなんて、お世辞だったとしても信じられない。
そんな私に透さんはやわらかく微笑みかけた。
「もっと自信もてばいいのに。
女の子なんだから、恋をすればいつだってお姫様になれるんだよ」
顔を覗きこまれてそんなことを言われると、ちょっとどきっとしてしまう。

