「それでビルの間で倒れてたのを、助けてくれたのが哲真って人らしい。
派閥っつーかな。ヤンキーも色々複雑らしいけど、哲真って人はその一番上だったって。
ケンカも強いし、龍也も一目置いてたって。
それまでは一匹狼だった龍也も、哲真と会ってからは一緒にいることが多くなったらしいよ」
「……仲がよかったんですね」
二人の関係を考えると、複雑な気持ちになった。
「うん、龍也のこと、すげー気に入ってたみたいだよ。あいつ人懐っこいところあるしな」
分かる気がする。
龍也君怒ってると怖いけど、かわいいなって思ってしまう所もたくさんあるから。
龍也君もきっとずっと悩んでいたんだろう。
尊敬している人の彼女を好きになってしまって。
お互い信頼していたからこそ、恋人をとられた哲真さんの怒りも大きかったんだろう。
「星乃先輩は、最初哲真さんと付き合ってたんですよね?」
透さんはこくりと頷いた。
「有華さん、あれでけっこうお嬢さまなんだよね。
龍也が同じ高校になって、彼女を守らせるようなことも期待してたんじゃない?」
冗談で笑い飛ばすみたいに、付け加える。
「とはいえ同じ高校になったらなったで、二人が急接近して結局とられちゃったんだから笑えるよね」
自分で言った後、おかしくなったのか爆笑している。
「透さん、ひどい……」
あまりに突き放した発言に、龍也君に同情してしまう。
なんて友達がいのない人だろう。
この人結局、自分が楽しかったら何でもいいんじゃ。
「哲真ってやつもけっこう有華さんの束縛ひどかったらしいし、どっちにしろほっといても別れてたって話だけどね」
私はもやもやした気持ちになって、ぽつりと呟いた。
「複雑ですね」
「そうそう。ヤンキーはヤンキーで大変らしいんだよ。
龍也はもともとケンカが好きでやってるっつーより、暴れたかっただけらしいし。
それも落ち着いてからは、哲真と仲よかっただけみたいだから。
だけどそういうのやめたいと思っても、色んなやつが絡んでるからなかなかはいやめますってわけにもいかないらしいし」

