言ったのと同時に、ぼろっと涙がこぼれた。
「げっ、泣かせちゃった」
道の真ん中で泣いてしまったのに気付き、ごしごしと顔を拭う。
恥ずかしい。
泣くつもりなんてなかったのに。
だけど星乃先輩に敵いっこないってわかっているからこそ、他人に言われると痛い。
透さんもまさか私が泣くとは思っていなかったのか、必死に謝っている。
「ごめん、ごめん。冗談だから」
「嫌いです」
「えー」
「私、透さんのこと大嫌いです!」
半分泣きながらそう言い放つと、透さんは頭に手を当て、困ったように笑った。
「まいったなー。陽菜ちゃんがかわいいからいじめたくなっただけだよ」
「いまさら信じると思ってるんですか?」
「あー、本格的に嫌われちゃったなぁ」
彼はちょこちょこと私の周囲を歩きながら、手を合わせて謝っている。
「お詫びにおいしいものでもおごってあげよう」
「嫌だ、もう帰ります」
「じゃあ昔の龍也の話でもしてあげようか?」
絶対につられない、と思ったのに。
龍也君の話、と聞くとぴくんと顔を上げてしまった。
「ふっ、バカ正直」
バカにしたように笑われたので、くるりと身体をひるがえす。
「帰ります」
「嘘うそ。とにかくどっか入ろう。ね、色々教えてあげるから」

