有華は怒った顔でそれをぱらぱらめくった。


「勉強とかしなくていーじゃん。適当にやっとけばいいんだって」

「お前、来年受験生だろ? 
有華こそもっと勉強したほうがいいだろ。進学すんだろ?」


有華はめんどうそうに舌をだした。


「やだ、やめてよ親みたいなこと言うの。
大丈夫、ほどほどにしてるし私立の名前書いたら誰でも入れるような簡単なとこ行くから」


あきれて溜め息がもれる。


「お前ってさ、将来の夢とかある?」

「えー、別になーい。
ネイルとか好きだけど、別に働きたいってわけじゃないしー」

「モデルの仕事は?」


そう聞くと、だるそうに首を振った。


「無理無理。どうせ読モとか、お小遣いかせぎだし。
もちろん本格的にそっち目指す人もいるけど、もう嫌なんだよね。
足のひっぱりあいとかもあって、色々面倒くさいし。
あたしみたいなのがずっと通用する世界じゃないもん」

 
彼女といる時間が長いほど、有華とひなは全然違うと思う。


当たり前だ。
最初から、有華に似てないからひなを選んだんだから。


『先生になりたいので』


そう言った、ひたむきな横顔を思い出す。


『龍也君は、なりたいものってありますか?』


別に俺に有華をばかにする資格なんてない。
俺だって、なりたいものも目標もなくて、毎日なんとなく過ごしていた。


考えていることといえば、親に反抗することくらいだった。


髪を染めようが学校をさぼろうが、俺の親は何も興味なんてないみたいだったけれど。
だから、うらやましかった。