『ひなって呼ぶから』



最初に龍也君に会った日に言われた言葉が、唐突に蘇る。


涙が頬をつたっていく。


思わず首を横に振った。



私はひなじゃない。
私のことをひなって呼んでくれる人は、もうどこにもいない。


頬にされたキスが、今も残っているみたい。



『俺のこと、まだ好きか?』



――好きだよ。



ぽろぽろと涙がこぼれる。


笑ってるけど、強いからじゃない。
龍也君には、泣いてる顔なんて見せたくないから笑ってるんだよ。



龍也君。



やっぱり私、諦めないとダメかな。
ひな、って呼ぶ声が、頭を離れない。


どうして?
好きじゃないなら、どうしてあんなことしたの?