雅樹side




「ただいま。」


母さんが、夕飯の支度をしていた。

「あ、おかえり。」


テーブルには唐揚げ。

そばには、摘み食い禁止のメモ。



唐揚げに手を伸ばしながら


「あのさ、東総合病院って学生になんか募集でもしてるの?」


と現役看護師である母さんに聞いてみた。

摘み食いは、菜箸によって阻止された。



「え、何が?する訳ないでしょ。
看護学校とかならわかるけど、普通校の学生に募集かけないと思うわよ」


「…そっか」




じゅわじゅわと唐揚げを揚げていく音だけがキッチンに広がる。






舜の明らかな嘘。

しかも、何か大きなことを隠すような。




なるみは誤魔化せても、俺は誤魔化されねぇよ。



何年一緒にいると思ってんだよ、舜…





ーーppp


3コールくらいで、舜が電話に出た。


『…雅樹、また会いたくなったの?』

苦笑しながら、舜が話す。


「そういや、15分前も会ってたよな。」


『で?なんか話があるんでしょ。
その感じだと』


「…話があるのはお前じゃねーの?舜」


舜は沈黙をつくった。
そして重い口を開いた。


『…何が?
あ、今度の土曜日に福々堂の新作が出る話?』


わざとらしくボケる舜が痛々しかった。




そんなのじゃない。


お前が、何が大事なことを隠しているんじゃないかと思っているだけなんだよ。



「…今度、食べに行こうな。」



俺の口からは、この言葉しか返せなかった。