午後6時
 
補助されたての道路を走り、到着した目の前
の店に私は立ちすくんでいた。
 
その店の看板には大きく『力量よし、容姿よし、語学力可』
と書かれ

その隣は看板商品だというように容姿端麗な男達の写真が張られている。

「‥やっときたわね。命(みこと)。」

看板に意識を向けていた私はその店の中から見慣れた顔の女が、笑いながら歩いて来たことに気づき、
  
しまった…と顔をひくつかせた。

…私は騙されたのだ


「…帰りたい」

「うん。だからとっと決めて帰りましょうよ。」

そうじゃないだよ!

というあたしの気持ちを知ってか知らずか無駄に派手な装いのその女は距離をすごい早さで詰めたかと思うと

無理やり私の手を掴み、店の入り口へと歩いていく


「ねえ、律。君ってあたしの執事だよね」

「そうね。」

「それじゃあ執事ってみんな主に嘘つくもんなの」

「そうね。」


ちがうでしょ!
君しかいないよ。そんな執事。

執事って主にはもっと優しいものなのではないだろうか。いや、優しくなくてもいいけど、主人騙して連れて行くってどうなの。

あの、ディナーにいきましょうとか書いてあったメールはなんだったの。

そんな私の抗議の言葉も前を歩くこの人は聞く耳をもたない。

 
「‥本当に入るの?…ここに」


最後の頼みだ。お願いします。

私は掴まれいた腕を見ながらそうつぶやいた。


「もちろん」


ああ。絶望的である