【短編】うぶ恋




俺の好きな人。

そして初恋。


俺の好きな人は大人しくて物静か。

家庭部に所属してるらしく部活をしているときは生き生きしている。

俺が用事を頼まれるといつも手伝おうとしてくれる。


試合を応援してもらったことがあるとか、

なにか接点があったとか、

なにか特別惚れるようなエピソードがあったわけじゃない。


なぜか彼女を追ってしまう。

なぜか彼女に惹かれる。


なんでだろ?


彼女のことを考えてると視線を感じた。


「中里?どうした?」


最近よく目が合う。


「なんでもないよ。………その大量のノートどうしたの?」


俺は先生から無理矢理渡されたノートを抱えていた。


「あー、頼まれちゃってさ。職員室行くしついでにな。」


俺がそう言うと彼女は怪訝そうな顔をする。


「貸して。私も手伝う。」


いきなり無理矢理俺からノートを奪っていった彼女。


「中里!?俺こうみえても力あるんだぜ?…それに女の子にそんな重い物持たせられないよ。」


中里からまた奪い返す。

彼女があまりにも悲しそうな顔をするもんだから


「じゃあ、中里はこれな。」


俺のノートを1冊だけ渡す。

わざわざ自分のノートを渡すあたりあざといのかもしれない。


俺の後ろを一生懸命ついてくる。



なにか話すわけじゃない。

黙って俺についてくる彼女。


ちょこちょこついてくる彼女が可愛い。

だからいつも自然と彼女の歩幅に合わせてしまう。