華蓮はひたすら走る
さすが逃げ隠れの上手い坂本とあってか、ものの数分で一番隊をまいた
前にもお世話になった、寺田屋へと到着した
「はぁっ、はぁ」
息切れの上に、体力は限界だった
「いやぁ、目でわかると言うのも助かるんじゃが、あの男は手強そうぜよ」
坂本はそこまで疲れているようには見えないが、一筋だけ汗をかいていた
「……だから、言ったじゃないですか
新撰組に、やられないように、してくださいね、と」
「ははっ、懐かしいの
じゃが、現にやられとらん」
爽やかに笑い飛ばすところは変わっていない
あの日からずいぶん経っているはずなのに、つい昨日のことのように感じた
「もう……私はヒヤヒヤしたんですからね」
「ひや、ひや?」
「肝を冷した、ということです」
「華蓮は心配しすぎぜよ」
「坂本さんが楽観視しすぎなだけです」
お互いに、顔を見合わせて笑う
そして、坂本が右手を差し出した
握手だろうと思い、華蓮はその右手を握る
「久しぶりじゃ、元気でなにより」
「はい、坂本さんこそ、無事でよかったです」
坂本は華蓮を引き寄せ抱き締める
一瞬、戸惑ったが挨拶であると分かっていたから華蓮も抱き締め返した
「西洋式挨拶、学んだんですね」
「おぉ、おまんにはわかるんか!!」
そっと体を離す
「未来の日本だと握手は普通ですよ」
「ほぅ………それは楽しみぜよ」

