年が明けて元治二年



新撰組ではある異変が起こっていた



仏と言われていた山南の態度がここ最近おかしいと噂されているのだ



食事は自室でとり、前は隊士たちと談笑していたが、一切しなくなった



それも、近藤や土方が伊藤ばかりを目にかけるからだと思われている



華蓮は少し心配になり、山南の部屋へ足を運んだ






「山南さん、今、大丈夫ですか?」



「湊上君ですか……どうぞ」



以前よりも、冷たくなった言葉



理由がわかっていても、心にチクリと傷を作った気がした





「山南さん、本当にこれでいいんですか?」






──────────



「少々、提案があるのですが……」



「どうかしました?、山南さん」



伊藤のことで、山南も藤堂も大変なことになる可能性があるというのに、冷静だ



──すごい人だな







「少し言いにくいのですが、私はその史実通りに脱走しようかと思います」




──えっ!?




『はぁ!?!?』




それはとんでもない提案だったのだ





「おい、どういう意味だよ」



土方はキレ気味



近藤は何が起こったのかわかっていないようで、放心状態になってしまっている



「私は、その史実通りここを抜けます
ただ………それは消極的な意味ではありません

外だからこそできる仕事がある
違いますか、湊上君」




「………山南さん………………」




山南は伊藤といずれ対立するとわかっている



そのことで新撰組を窮地に追いやるわけにはいかない



だから、表舞台から姿を消して、裏の仕事をするというのか



華蓮は唇を強く噛み締めた