「どんなに私がこれからのことを教えたとしても、山南さんと伊藤参謀は馬が合わない……それは私が言わなくても山南さんはわかっているんです」



山南は自分のことも冷静に客観視できるから



華蓮が対立を防ごうとしても、防ぎきれなくなるだろうと考えている




「それなら、俺もだが」



「土方さんは違います
伊藤参謀を利用することも考えるでしょう?
それに、近藤さんを残して脱走なんて絶対にしません」



土方は近藤の名を世間に知らしめたい



その想いがあるからこそ、周りの人間から嫌われ役を買って出てまで副長として組織を束ねているのだ




「……そう言われればそうだな」



「山南さんは自分のせいで組織を崩すようなことをするのはきっと嫌なんです」




山南が死ぬことで、藤堂との繋がりもは薄くなり、伊藤との溝は余計に深まる



新撰組にとってはデメリットだらけだ





「だから山南さんは──────」





─────────





「私は反対です」



山南はハッキリと自分の意見を述べる




──こっちも予定通り、か



「西本願寺は仏様がいる場所、そこを汚してまで押し入るのは納得いきません」



土方と近藤は成り行きを見守ることしかできない



これは山南が言い出したことなのだ




「山南さんは人がいいですからね……
でも、他にどこかいい場所でもあるのですか?」



「それはっ………」



山南は明らかに悔しそうな表情




「どうかな、近藤局長、土方君
考えてみてはもらえるかい?」




わかっていたこととはいえ、この一言を言うのは胸が痛む





──頼む、上手くやってくれよ





「そうだな、積極的な方向で考えてみるか」










この後、史実通り西本願寺に移転することが決まったのだった