──ドカドカドカ、ピシャン




「れ、蓮っ!?」



土方が驚くのも無理ない



伊藤と話しているはずの華蓮がもう部屋に戻ってきたのだ



「何かあったのか…!?」



「………しつこく女か、と聞かれたのでキレて帰ってきました」



土方はしばらく黙っていた




「……もしかしたら、それが狙いかもしれねぇな」



──どういうこと?



「鋭いヤツからしたら、お前なんか女だってすぐにわかるんだよ

そうすれば、どうしてこんな人斬り集団なんかにいるのかって詮索したくもなるだろ

要するにお前がどんなヤツなのかもっと探りたかったんだろう」




「そんな…………」




女だ、女だと言われて、それを否定するために男らしくすることだけを徹底してきた



だが、それだけでは余計に疑いを持たせてしまうことになるのだ




「どうしましょう、私、雰囲気に流されて啖呵を切ってしまいました」



「まあ、それくらい問題ないだろ
伊藤もお前のこと本気で気に入ってるようだしな

ただ、これからは少し態度を変えてみたらどうだ?」



あっちが裏をかいたのだとしたら、こっちだって負けてはいられない



「わかりました、やってみます
やられっぱなしは嫌ですもんね」



「ああ……だが、無茶はするなよ
危なくなったら誰かを呼ぶか、逃げろ」



相手を探るにはリスクがついてくる



伊藤がどんな手を打つかわからないから、どんなことになるのか華蓮にもわからない



「はいっ、大丈夫ですよ」








「お前のことも心配だが、それよりは山南さんだな」



土方に頼まれたお茶を運び、華蓮は彼の正面に座る



「はい、あの提案……山南さん自身が嫌にならなければいいですけど」



「仕事を途中で投げ出す人じゃねぇから、上手くやるとは思うがな……」






新撰組に新たな嵐が起ころうとしていたのだった