──「それじゃあ、頼んだぞ」



新撰組の鬼の副長の言葉が頭の中で木霊する



どうやら、俺は隊士募集をしに江戸に行くことになったらしい



正直、まだ若輩の身でこんな大役を任されるとは思ってもみなかった



隊士募集となれば、それ相応の人材を選ばなくてはならない



戦力になり、武士道を心から重んじる人間が、この世の中どれくらいいるのだろうか





「まあ、あんまり堅く考えるな
お前の目星がついたら近藤さんも行くからよ」



「えっ、近藤さんが?」



──なんだ、やっぱりか



自分一人ではまだ力不足──そう思ったとき、隊士募集を決めた当の本人は呑気そうに言ったんだ




「うむ、だが、人選はほとんど平助に任せる
お前は俺と違って教養があるし、性根も素直だ」



「そ、それは近藤さんの方が……」



真っ正直な近藤が人に言える言葉だろうか



いや、真っ正直だからこその言葉なのか




「と、とにかく俺はお前の目に任せるからな、よろしく頼む」



話はほぼ近藤が押し切る形で終いとなった










──ま、江戸に帰るのも悪くないけど



月が照らす廊下を歩き、部屋に向かう





ただ一つだけ気がかりがあったのだ



女の身一つで時間を飛び越え、大きな力を手に入れた少女



年齢がほとんど変わらないせいか、自分が幼顔だからか、兄妹のように接している




──でも土方さんも、総司もみんないるから大丈夫かな……



藤堂は一つ溜め息をつくと、そっと襖を開けて部屋に入った