京の町を歩けば歩くほど、自分たちの無力さを思い知らされる



華蓮がいなかったらどうなっていただろうか



土方は近藤と容保公に会いに行き、帰りに町を少し見てから帰ってきていた



帰る家も食べるものもなく道端に座り込む人々、両親を亡くし生きる術を失い泣き叫ぶ子供たち



「………チッ」



軽く舌打ちをして、机を叩く



華蓮は一番隊として外に出ているからか、まだ戻っていなかった






「土方さん、入りますよ」



これは沖田の声だ



──帰ってきたのか



だが、沖田は基本的に何も言わずに入ってくることが多い



こうやって真面目になるときは大事な話があるときだ



「入れ」



土方は背筋を伸ばし、何を言われるか待った








「今、土方さんは自分の無力さを実感中ですか?」



──いきなり何を言い出すんだ、コイツは?



「なんだ、からかいに来たなら帰れ」



しかし、追い出そうとしても一向に沖田の表情は変わらない



「別にからかってなんかいません
僕だって、そう思ってますから」



「……何が言いたい?」



相変わらず、話の内容が掴みにくい



「全く、土方さんって人は……
僕たち以上に今回の事を悔やんで悔やみきれない人がいるでしょう」



「………蓮のことか?」



力を持つ華蓮が自分の判断が遅れたせいでと追い詰めていることは想像がついていた



だが、土方は不器用で言葉のかけ方を見いだせずにいたのだ



「……わかってるならいいですけど」



「報告ご苦労だった、もういい」



沖田の言いたいことはわかった気がした



「言葉に出さないとわからないこともあるんじゃないですかね?
とにかく、巡察に支障出されても困るので、頼みますよ」



捨て台詞を残すと、さっさと部屋から出ていった



「はっ………何が巡察に支障だ」



土方は沖田の出て行った方を見つめると目を細めて笑った