「あと一つだけいいですか……?」
「なんだ?」
みんなは目の前のことだけ考えていればいいのだが、歴史を知る華蓮はそういわけにはいかない
「この後、恐らくうまいこと逃げる長州藩士も出てきます
その人たちを追う許可を得るためにも……」
「近藤さんは会津藩の所へすぐに向かえる場所にいた方がいいってことか」
「はい」
長州は逃げつつ京を離れる
京都守護職という立場の新撰組が、民を脅して逃げ延びる長州藩士を捕まえるには京を出る必要もある
その許可をもらいに行くには新撰組局長である近藤が行くべきだろう
土方は少し考えた後、沖田に声をかけた
「総司っ!
一番隊は近藤さんを連れて会津藩の陣にすぐ行けるような場所に行け」
「わかりました」
一番隊は腕のいい人が揃っている
近藤の親衛隊と言ってもいい
土方は沖田の肩に手を置いた
「絶対に戻って来いよ……近藤さん連れてな」
「……何言ってるんですか、当たり前ですよ」
いつもそばにいる土方にとって、こんな戦場で近藤と離れるのは忍びないのだろう
沖田に任せるのは、土方が絶大な信頼を置いているから
近藤を崇拝していると言ってもおかしくないほど尊敬している沖田は何があっても近藤を裏切ることはないだろう
口には出さないが、9歳離れている二人の間に絆というものはちゃんとある

