海風の如く





「蓮、何か思うところがあるのか?」




「土方さん………」




会津藩の陣を後にし、少し広い場所で隊士を待機させた



華蓮は副長付小姓ということで、平隊士とは離れ、土方のそばにいる



少し遠くの方からは既に騒がしい音がしていた




「あの…………」



言いかけてやめてしまう



ここは今、戦場だ



華蓮のような人間が口を出していいのかためらうのも無理ない




「遠慮なんかしてる場合じゃねぇ
お前も町が焼かれねぇようにしたいんだろ!?」



華蓮はコクリと頷く



それを見て土方はニヤリと笑った



「んなら、やることは一つだ
お前も力を貸せ」



「……っはい!!」




──何を今更ためらっていたんだろう、もう引き返すことなんてできるはずがないのに



華蓮は一度下を向いてから迷いを捨てきったように土方を見上げた




「会津公に指示された通り、蛤御門にも隊士を向かわせるべきです
ただ、そこには会津藩と薩摩藩が居合わせます
ですから、冷静かつ穏便に物事を進められる………斎藤さんみたいな人を向かわせるべきだと思います」



「わかった、斎藤、三、四、六番隊を連れて行け
全てお前に一任する、源さんもいるからなんとかなるだろ、頼んだぞ」



土方はすぐに指示を出す



「承知」



斎藤は隊士たちの元へ走って行った






「残りは手分けして」



華蓮は土方を見つめる



『京の人々を守る』



「だろ?」



土方と声が重なった



「………はいっっっ!!」





──この人が味方にいてよかった




華蓮は精一杯の笑顔と声で応えた