海風の如く





のちのちはこの会津公を説得せねばならないのだが、この時華蓮は松平容保のことを甘く見ていた



会津藩は現代でも誇り高く、新撰組と同じく最後まで自らの意志を貫いたと伝えられている



そんな藩の藩主が、たかが小娘の言葉で動くかどうか……というのはもう少し先の話












「ご報告致します!!」



会津陣内にて、松平容保と新撰組が向き合っているところに、何やら慌ただしい空気が流れる



「何事だ?」



会津公もある程度予想はついているのか、穏やかに尋ねる



「隠れていた長州藩士が」








──ドオォォォォン




報告の声に被って聞こえる大砲の音 



だれもがその音のする方を向き、息を飲んだ




「う、動き出しました!!」







これは華蓮にとって予想外だった



命令が下る前に、京から離れる前についに始まってしまったのだ




「……わかった、兵を集め、御所を守れ
それから新撰組、そなたたちもだ」



「はっ」



「ただ、全員とは言わぬ
隊を分けて、京を守れ
新撰組は京都守護職であろう」




─────…!!!



こんな言葉を言われるのも、また予想外




「…承知しました!!」




近藤は一瞬驚いてから、勢いよく返事をした



そのまま隊士を引き連れて、会津藩の陣を出る



華蓮は最後にチラリと振り返った







──バチリ






会津公と目が合う



──何かを見抜かれている……?



そんな気がした



それを恐れた華蓮はすぐに目をそらし、振り切るように歩き出した