海風の如く





ジリジリとしているのは、太陽だけでなく、ここの雰囲気



「だから、会津中将様の命令で来たっつってんだろがっ!!」



「とっ、歳!!
落ち着いてくれ、きっと彼らにも理由が」



「あるわけねぇだろっ!!」



所司代ではきっと話にもならないだろうからと真っ先に会津藩の陣に来たはいいものの、門番たちが上に取り次いでくれないのだ



そんな態度に初めは大人しくしていた土方もついにキレた



「田舎侍が……そのような口の聞き方を!!」



味方同士のはずなのに一触即発という空気



他の隊士もいる手前、華蓮も下手に動けなかった





「あーあ、土方さんって本当に短気ですよねぇ」



そしてこんな非常時でも全く同様しないのが沖田総司だ



「……どうしてそんなに呑気なんですか
事態は一刻を争うんですよ?」



呆れてものを言えなくなる、というのにはとうに慣れた



ため息をつく華蓮に沖田はフッと笑う



「大丈夫ですよ、こういう時は彼がきっとなんとかしてくれます」



沖田が見やったのは────斎藤





──斎藤さん!?





斎藤は無駄口を叩かない上に、口数も少ない



そんな彼にこの状況をどうにかできるとは思えなかった






しかし、斎藤はどうどうと前に出る



「失礼ながら
我々が会津公の命で参ったという証拠はある」



そう言って会津公からの手紙を門番の前に突き出す



「そちらが本物ではないと勝手に判断するのは構わないが、もし本物だった場合、それは会津公の命に背いたことになるのでは?」



ピシッと門番たちの動きが止まる




──その通りです、斎藤さん……



華蓮も同じことを言いたくてたまらなかったのだ



固まったままでいる門番をよそに、斎藤は近藤と土方にコソッと話す



「お二方とも落ち着いて下さい
これで上に取り次いでもらえるはずです」



土方は近藤と目を合わせると、斎藤にすまねぇ、助かったとだけ言った