「俺さ、実はチョコってそんなに好きじゃないけど、本命からは貰いたいんだよ」
「も、貰えるんじゃないか? お前、モテるし……」
「だからさ、コレ、ちょーだい」
「……?」
「お前から俺に、チョコくれよ」
「なん、で?」
「言っただろ、本命からは貰いたい、って」
そう言うと、祥太は余っているチョコを1個取って俺に持たせた。
頭が混乱して、何をやらされるのかも考えられない。
けど、祥太が余りに真剣な表情をしてるから、笑って誤魔化して今の状況から逃げることも出来ない。
「ほ、本命って……その……」
どうにか声を絞り出したもののうまいこと言葉が紡げず、俺は視線を祥太から外して俯いた。
「男ならさぁ、自分の好きなヤツからの本命チョコって貰ってみたいだろ」
やけに落ち着いた声が、静かな部屋に響き渡る。
「付き合ってからじゃ、ダメなんだよ。モチロン義理チョコもダメ。まだ友達の状態で……」
祥太の手が、チョコを持たされたままの俺の手をゆっくりと持ち上げた。
無駄に心拍数が上がって、尚更顔を上げられない。


