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 セットしておいたアラームが鳴ったのは20時半を過ぎた頃だった。

 21時からは見たいドラマがある。

 それが始まるまでに問題のチョコをなんとかしなければならない。

 型に流し入れて固まったチョコを冷蔵庫から取り出している時だ。

 インターフォンが鳴らされ応対すると、幼馴染の顔が画面一杯に写っていた。

 思わず吹き出しそうになるのを堪えて出迎えてやると、家に入るなりソイツは「良い匂いがする」と言って来た。


「こんな時間にどうしたんだよ」

「今日学校で話してた本、やっぱ気になってさ」

「あれね。持って来るからちょっと待ってて」


 足早に自室へと階段を駆け上った俺は、急いで本を抱えて降りて来る──が、玄関にアイツの姿が無い。


「……やばっ」


 嫌な予感がしてリビングへ入ると、キッチンカウンター前にアイツが立っていた。