「拓弥!」
「……っ!?」
祥太が俺の手を強く引いて、リビングの入り口に立つ姉貴から逃げる様にして俺達はキッチン側の出入り口から玄関へと走った。
急いで靴を履いて、外に出る。
2月の寒空……どころじゃない。
肌を刺す、極寒。
音を立てて吹き荒ぶ空っ風に、俺は思わず縮こまる。
急いで出て来たせいで上着を羽織ってこなかったんだ。
「急に連れ出してごめん。ゆいちゃんに邪魔されたくなくて」
「あ、ああ。うん。大丈……──っくしゅっ」
寒さに震える俺を、祥太は何の躊躇いもなく、ジャケットの中へと引き込んだ。
「あ……ありがたいけど、ここ、庭先……」
「んー?」
「や、門灯点いてるし、そろそろ母さん帰ってくるから」
祥太は胸を押す俺に構いもせず抱き締めて、すんすんと首筋辺りの匂いを嗅いでくる。
「チョコの匂いがする」
「作ってたからね。ほら、離れろって」
「離れて良いんだ?」
「……嫌な聞き方するな」
本当のところは、ちょっと戸惑う。
寒いからってのも少しだけあるけど、祥太の腕の中が思いの外居心地良くて。
ふわりと香る香水のような匂いも何だか落ち着く。
ここが庭先じゃなければ。
誰も来なければ。
もう少し、このままでいたい。
「……なあ。今から俺んち来る?」
ぎゅ、と強く抱き締められて、艶めいた低音が直に注ぎ込まれる。
鼓動は速度を増して、まるで早鐘の様。
「拓弥、どうする?」
艶っぽくて、甘さを含んだ声色。
その声に反抗出来るはずもなく。
俺は、祥太の服を掴んだ。
「……行き、たい」
恥ずかしくて、そう答えるのが精一杯。
そっと俺より身長の高い祥太の顔を見上げると、甘い視線が俺を見ていた。
唇が重なって、忙しなく抱きしめ合って。
寒さなんて、どうでもよくなった──
fin


